野田遺跡・下中瀬遺跡(11月20日~11月24日)


今週は調査区の微地形を探るため、阿子島功山形大学名誉教授を調査指導でお呼びし、遺跡の基本層序(地層)などを検証しました。その結果、井戸跡や包含層から火山灰が認められ、当時の遺跡の立地や古環境などが分かりました。


井戸枠内の埋土の中から、白色粘土層が発見されました。青森県の十和田火山から噴出した火山灰土(西暦915年か)と考えられます。


今週は井戸跡の井戸枠材も取り上げました。写真は縦板を外し、隅柱と横木がほぞ穴で組まれた状態です。今から1,100年前のものと考えると、調査をしていても大変感慨深いものがあります。


環清工業様のご協賛に対し、感謝状を贈呈いたしました


当財団の研究紀要刊行事業等について、多額のご協賛をいただいた酒田市の環清工業株式会社 代表取締役社長 青山武様に対し、去る11月22日、環清工業本社内において瀬渉理事長から感謝状を贈呈いたしました。


青山社長からは、ご協賛を寄せられた趣旨のお話があり、瀬理事長からは、有効に活用させていただきますという旨の発言がありました。環清工業様、誠にありがとうございました。


整理室からこんにちは(清水遺跡第1~7次)


村山市に所在する清水(しず)遺跡は、平成22~26年度に発掘を行った遺跡で、奈良時代から平安時代にかけての集落跡になります。


清水遺跡では、大量の土器が捨てられた溝跡が発見されています。
そこから出土した土器を洗ってみたところ、墨で文字が書かれているものがたくさんあることがわかりました。


これらは墨書土器(ぼくしょどき)と呼ばれ、出土状況から祈りや祭りに関して使用されたものと思われます。
中でも注目されるのは「縄」と書かれたものです。
「万」や「千」、「王」といった語句は、墨書土器に記される祈りの文字として多く出土するのですが、「縄」の字はほとんど出土しません。

全国的に同じ文字を探すと、富山県の任海宮田(とうみみやた)遺跡からのみ、大量に「縄」の墨書土器が発見されていました。

奈良時代から平安時代にかけての山形県では、国家的な開発計画のため全国からたくさんの人びとが移住させられたことがわかっており、北陸からの移民も多かったとされます。
この「縄」が意味するものが人名なのか地名なのかはわかりません。
とはいえ、ふたつの遺跡で見つかった「縄」の字のつながりは、富山から山形へやってきた人びとの存在を思わせる発見となりました。


野田遺跡・下中瀬遺跡(11月13日~11月17日)


野田遺跡では、測量のために空中写真撮影を行いました。調査現場の奥に見える鳥海山はもう雪景色です。


井戸跡の井戸枠材の取り上げを行いました。掘方が狭小なため、掘方を拡張して掘り下げを行いました。


打込み杭などを半截したところ、地面に対して斜めに杭が入っていました。今後取り上げて人為的な加工があるか確認します。


野田遺跡・下中瀬遺跡(11月5日~11月10日)


11月5日(日)に、下中瀬遺跡と野田遺跡の調査説明会を現地で行いました。数多く出土した当時の祭祀具である斎串(いぐし)や、当時の文字が書いてある墨書土器などを展示しました。


天候が心配されましたが当日は晴れ、野田遺跡の現場に立って説明をすることができました。説明会には、地元の方を中心に約60名が参加してくださり、約1,200年前の建物跡や井戸跡を見学しました。


説明会の次の日には、小型のヘリコプターを飛ばして野田遺跡の空中写真測量を行いました。特に建物跡や井戸跡のある遺構集中部を中心に測量しました。


野田遺跡・下中瀬遺跡(10月30日~11月2日)


野田遺跡のSB1掘立柱建物跡です。今週は建物柱穴の完掘(柱穴の柱痕や埋め土を完全に掘り上げること)を行いました。


SB1掘立柱建物跡の柱穴の完掘状況です。柱穴中央部にはアタリ(柱根が存在していた部分)が残るものもありました。


今週はSE101井戸跡に近接するSK102土坑の完掘も行いました。この土坑からは斎串(いぐし)や火きり臼が出土しました。


『研究紀要』刊行事業等への協賛募集のお願い

※募集は終了しました。
ご協賛いただいた皆様、誠にありがとうございました。

公益財団法人山形県埋蔵文化財センター『研究紀要』の刊行事業等に賛同する企業・団体・個人などを対象に、事業に要する資金提供の賛同者を広く募集しています。


研究紀要協賛 趣意書(PDF

【協賛の方法】
協賛金(寄付金)の提供
(法人その他の団体は1口1万円から、個人は1口3千円から)

協賛金の使途】
『研究紀要』の刊行事業等にかかる経費(印刷製本費等)のうち、全国の図書館、博物館、大学等の研究機関等に無償で配布するものに要する経費
※このほか、埋蔵文化財の調査研究・理解促進に資するその他の普及啓発事業にも充てる場合があります。

募集期間】
平成29年11月1日から平成29年12月28日まで

税務上の取り扱い】
協賛金(寄付金)は、法人の場合は損金算入、個人の場合は所得控除の対象となります。

その他】
研究紀要及び当センターホームページに協賛者名を掲載します。

【協賛の申込み方法】
「研究紀要協賛申込書」に必要事項をご記入のうえ、下記までご提出ください。
研究紀要協賛申込書(Word , PDF

【お問合せ・お申込窓口】
(公財) 山形県埋蔵文化財センター
〒999-3246 山形県上山市中山字壁屋敷5608番地
TEL:023-672-5301 FAX:023-672-5586
E-mail:yac@yamagatamaibun.or.jp

 


野田遺跡・下中瀬遺跡(10月23日~10月27日)


野田遺跡の掘立柱建物跡です。先週の答えは、この写真の黄色の線と白色の線上の柱穴で構成された建物になります。黄色線の建物は、3×3間で、主軸がほぼ南北を向きます。白色線の建物は、2×3間で西側に1間拡張されたようで、主軸がやや西側に傾きます。白色線の建物の柱穴には柱痕が残るものが多く、黄色線の建物より新しいことから建替えが行われたものとみられます。


野田遺跡の調査風景です。今週は天気の良い日が続き、先週付け替え工事が終了した農道の下の調査も行いました。農道の下からは、平安時代(約1,150年前)の土器の底に、墨で字が書いてある墨書土器が2点出土しました(下の写真)。さて、何と書いてあるのでしょうか?


農道の下から出土した墨書土器です。2文字あるようです。墨書土器の文字には、人名や地名(所有者や所属)、吉祥文字(おめでたい文字)などが書いてある場合が多くあります。


2つ目の墨書土器です。少し字がくずしてあるかもしれません。当時は文字を知っているのは役人などがほとんどで、一般の集落では記号として認識されて書かれる場合もあったようです。