「発掘された日本列島2017」で押出遺跡(高畠町)の遺物が展示されます。
押出遺跡は「大谷地」と呼ばれる泥炭湿地帯に位置する、縄文時代前期後半(約5800年前)の集落遺跡です。
遺跡からは土器や石器のほかに、木製品や漆製品、繊維製品やクッキー状炭化物など様々な遺物が出土しました。
中でも注目されるのは、赤色と黒色の漆で彩られた土器(彩漆土器)です。

平成27年度の第6次調査では、壺形の彩漆土器が出土しました。このような形の土器は、縄文時代を通してほかに例がありません。
「発掘された日本列島2017」では、この彩漆土器をはじめとして、当時の大谷地での生活を物語る遺物が展示されます。
ぜひ、ご覧ください。
「発掘された日本列島2017」開催のお知らせ(文化庁ホームページ)
◆巡回会場・会期◆
6月3日~7月23日 江戸東京博物館(東京都)
8月5日~9月18日 八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館(青森県)
9月30日~11月5日 三重県総合博物館(三重県)
11月18日~12月24日 安城市歴史博物館(愛知県)
1月13日~2月25日 壱岐市立一支国博物館(長崎県)
◆押出遺跡の報告書◆
『押出遺跡第6次発掘調査報告書』
『押出遺跡第4・5次発掘調査報告書』
『押出遺跡発掘調査報告書』
今回は馳上遺跡第8次(米沢市)の整理室からです。
◆調査の様子はこちらからどうぞ◆

さて、これは何でしょう?
そう、昆虫です。しかも羽虫です。
通常昆虫などは土の中で分解されてしまい、遺跡で見つかることはあまりありません。
それなのになぜ残ったのかというと、漆に閉じ込められたためです。虫そのものは分解されて、漆に虫の痕跡だけが残っている可能性もありますが、今回のように羽虫が見つかることはとても珍しいといえます。

しかも、7匹!(黄色の〇の部分)
この漆は今から約1,200年前の土器に付着しています。土器に入れられた漆の中に虫が入り、そのまま固まってしまったようです。
昆虫は種によって住む環境や、発生する時期が異なります。
詳しい分析はこれからですが、この昆虫の存在により、当時の遺跡環境や漆を使用した季節を推察することができます。

重機で表土を除去した後、遺構面を薄く削って土の違いを見極め、遺構の所在や輪郭を検出していきます。

昨年度の1次調査と同様、調査区の南側は暗色の粘土に覆われて低地が開けています。低地にもかかわらず、柱穴の存在から、何棟もの掘立柱建物跡が確認できます。

低地は水はけが悪く、2枚目の写真と同じ地点ですが、一夜の雨で冠水してしまいました。

今年度の先陣を切って八幡西遺跡の第2次発掘調査が始まりました。
今週は晴天が続き、好調な滑り出しです。

とはいえ、発掘調査に雨水や湧水(わきみず)などの排水処理は欠かせません。
水中ポンプを連続で動かすため、調査区に仮設電気を配線します。
これで調査を円滑に進められます。

蔵王第一中学校の2年生、3名の皆さんが職場体験に来てくれました。
はじめに、上竹野遺跡の発掘調査で持ち帰った土から遺物を探す
作業をしました。

2日目は羽黒神社西遺跡の土器を接合する作業です。
接合する土器がなかなか見つからず大変でしたが、
くっついた時の喜びもひとしおです。

図書の登録をお手伝いしてもらいました。
毎年2000冊ほど届く報告書。皆さんのおかげでとても助かりました。

最後の研修は勾玉作りです。硬いコハクを一生懸命削りました。
3日間、とても集中して仕事に取り組んでくれた姿が印象的です。

春の暖かい日差しの中、センター周辺の環境整備を行いました。

センターの桜も満開です。

桜だけでなく、水仙やチューリップも見頃をむかえました。
花々が咲き始めると発掘調査の開始はもうすぐ。
今年度もよろしくお願いいたします。
発掘調査報告書一覧にPDFデータのダウンロードページへのリンクを追加しました。
これまで当センターで刊行した発掘調査報告書の内容をご覧いただけます。ご活用ください。

「埋文やまがた58号」を公開しました。
是非ご一読ください。
羽黒神社西遺跡では、平成26年度の第1次発掘調査で、4点の土笛と考えられる袋状土製品(ふくろじょうどせいひん)が発見されました。

そのうち2点は、無傷の状態、あるいは一部のみが欠けているものでした。これらの袋状土製品は、閉じた形状をしていますので、このままでは断面や内部の状態を調べることができません。
そこで、製作技術を調べるため、東北大学学術総合博物館の佐々木理准教授のご協力により、博物館のX線CTスキャンを使い2点の袋状土製品の画像解析を行いました。
CTスキャンを実施することにより、土製品を壊さなくても、断面や内部を観察することが可能になります。

袋状土製品①は、断面の画像から、1枚の粘土の板をギョウザの皮を包むように、上部で粘土板の端と端をつなぎ合わせていることがわかりました。上部にあけられたあなは、上から何かが押し込まれたことを示す粘土のまくれ上がりが認められ、粘土をつなぎ合わせたのち、上部の中央に上から何かを押し込むことで開けられたものであると判断されます。

左側の端部の断面をみると、なんと表面では見えなかった、2~3mm程度の小さなあながあることがわかりました。
おそらく、携帯するために紐を通すためのあなでしょうか?
しかし、どうやら模様をつけるときに、あなが埋められてしまったようです。なぜ、あなが埋められてしまったのかは、残念ながら不明です。右側は残念ながら欠けていますが、もしかするとあながあったかもしれません。

袋状土製品②は、①と異なり、粘土の帯や小さな板をパッチワーク状につなぎ合わせて作っていることがわかりました。

②の端部は縁をきれいになだされており、①の端部に見られたような小さなあなはありませんでした。
現在では、X線CT画像解析という最新技術を活用することによって、貴重な遺物を壊さなくても、断面や内部の形状などの様々な情報が得られるようになりました。
また、袋状土製品①のように、表面上では観察できなかった、約4300年前に隠されてしまった痕跡をも見つけることができました。
このように、X線CT画像解析では、直接目に触れることができなかった隠された真実を、わたしたちは知ることができるようになったのです。
X線CT画像解析が進むことで、これまで知られてこなかった土偶やさまざまな土製品の技術や、それらに込められた過去のヒトの意図が解明されるかもしれません。
Yamagata Prefectural Center for Archaeological Research